アルツハイマー型認知症は、脳内の神経細胞の萎縮や機能低下が起こり、認知機能の障害を引き起こす疾患です。遺伝的な要因、環境要因、老化などが原因と考えられていますが、その発症機序は未だ解明されていません。
最近の研究により、アルツハイマー型認知症の発症にミトコンドリアの機能障害が関与しているという仮説が立てられています。ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー産生を担う重要な役割を持っており、脳細胞でも高いエネルギー消費を行っています。しかし、ミトコンドリアは自由ラジカルや過酸化脂質などの酸化ストレスにより損傷を受けやすく、その機能低下が老化や疾患の原因となることが知られています。
アルツハイマー型認知症患者の脳内には、異常なタンパク質であるβアミロイドやタウタンパク質が蓄積しています。これらの異常タンパク質はミトコンドリアの機能障害を引き起こすことがあり、逆に機能低下したミトコンドリアが異常タンパク質の蓄積を促進するという悪循環が生じることが知られています。
このように、アルツハイマー型認知症の発症にミトコンドリアの機能低下が関与していると考えられており、ミトコンドリアの機能改善による病態の改善が期待されています。ただし、現在のところ、アルツハイマー型認知症の治療法においてミトコンドリアの改善に焦点を当てた治療法はまだ開発途上段階にあります。