ミトコンドリア病って何？〜細胞のエネルギー異常から起こる難病〜
「最近よく耳にするけれど、実は詳しく知らない…」という方も多いのがミトコンドリア病です。 この病気はとても希少でありながら、子どもから大人まで幅広い年齢で発症する可能性があります。 ミトコンドリア病は単なる疲労や体力低下ではなく、細胞レベルでの深刻なエネルギー代謝の異常によって起こる指定難病のひとつです。
ミトコンドリアとは何か？
ミトコンドリアは、私たちの細胞の中にある小さな器官で「エネルギー工場」と呼ばれています。 食事から取り入れた糖や脂肪を材料にして、ATP（アデノシン三リン酸）という“体を動かすための燃料”を作っています。 心臓の鼓動、脳の活動、筋肉の動き、免疫の働きまで、すべての生命活動はATPによって支えられています。
そのため、ミトコンドリアがうまく働かなくなると、体のあらゆる臓器に不調が現れるのです。
ミトコンドリア病とは？
ミトコンドリア病は、この「エネルギー工場」が十分に働かなくなることで発症する病気です。 ミトコンドリアやその遺伝子に異常が起こることでATPが作れなくなり、細胞や臓器がエネルギー不足に陥ります。 その結果、筋肉・脳・心臓・肝臓・腎臓・眼・耳など、多くの臓器にさまざまな症状が現れます。
代表的な症状
- 慢性的な疲労感、運動時の強いだるさ
- 筋力低下、手足のけいれん
- 視力や聴力の低下
- てんかん発作や認知機能の低下
- 心筋症や不整脈
- 肝機能障害、腎機能障害
症状は人によって大きく異なり、同じ家族の中でも発症部位や重症度が違う場合があります。 そのため「多臓器にまたがるエネルギー障害」とも呼ばれています。
なぜ起こるのか？
原因は主に遺伝子の変異です。ミトコンドリアの働きをつかさどる遺伝子には「核DNA」と「ミトコンドリアDNA」の2種類があり、いずれかに異常があるとエネルギー代謝に障害が生じます。 遺伝的要因が大きいため、家族内に発症例が見られることもあります。
治療法はあるの？
残念ながら、2025年現在、根本的な治療法は確立されていません。 しかし、症状を和らげたり進行を遅らせるための治療や栄養療法は進められています。
- ビタミン類（特にビタミンB群）
- コエンザイムQ10
- アルギニンやL-カルニチン
- 十分な休養とバランスのとれた食事
また、国内外で遺伝子治療や新しい薬剤の研究も進められており、未来に向けて希望が持たれています。
患者さんやご家族へ
ミトコンドリア病は希少で理解が得られにくい病気ですが、同じ病気と向き合う患者さんや支援団体が全国に存在します。 専門医やサポート団体とつながることで、孤独感を減らし、生活の工夫を学ぶこともできます。 「ひとりで抱え込まない」ことが、長く病気と付き合っていく上でとても大切です。
まとめ
ミトコンドリア病は、体のエネルギーを生み出す仕組みが障害されることで、多臓器にわたってさまざまな症状が現れる難病です。 現在は完治させる方法はありませんが、適切なケアや治療、そして研究の進歩によって、患者さんの生活の質を高めていくことが可能です。 まずは「病気を正しく知ること」が、患者さん本人やご家族の支えになります。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、医学的診断や治療の代替にはなりません。体調に不安がある場合は、必ず専門の医師にご相談ください。
